柏木由紀【くすぐり小説①】ゆきりん、とある深夜のTV撮影にて

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1話:柏木由紀(ゆきりん)くすぐり小説

今日は深夜のバラエティ番組の撮影。

ゆるーいテレビ番組で、15分の枠なので台本も大した内容ではない。

毎回、何かニュースなどを取り上げて出演者もやってみるという内容だ。

台本にはいつも何が取り上げられるかは書いておらず、実際に収録が始まってから知ることになる。

私はこの番組のレギュラーで、他にも若手の男性芸人さんが司会をしており、毎回ゲストが1人くることになっている。

今回のゲストにはさっしーがきてくれる。

時間になったため、楽屋でメイクや着替えを済ませて収録スタジオへ向かう。

今日の衣装は膝上の長さのスカートにノースリーブのブラウスだ。

スタジオに到着すると、カメラに映らないところに、懸垂バーが置いてあるのが目に入った。

今日のテーマは筋トレかな?

と考えつつスタジオに入り、共演者に挨拶を済ませる。

私が最後に入室したようで、全員すでに揃っていたようだ。

そして準備が整い、いつも通り撮影が開始された。

ゲストであるさっしーの紹介がされ、その後テーマが発表される。

「今回取り上げるテーマは、くすぐりについてです!」

「「くすぐり!?」」

と私とさっしーの声が完全に被った。

そこから、皮膚感覚の専門家さんのVTRが流される。

くすぐったく感じるメカニズムが解説された後、くすぐったく感じる部位は人それぞれという話があり、VTRで専門家さんにインタビューしていたアナウンサーが体験することに。

アナウンサーさんは、おもちゃのマジックハンドで首・腋・お腹・膝などをくすぐられ、くすぐったそうに笑っている。

「うわーーーー、やば。見てるだけでくすぐったい!」

私はくすぐりに弱いので、触られているわけでもないのにVTRを見ているだけで身体がムズムズしてくる。

スタジオのみんなは楽しそうにVTRを見ている。

結果、インタビューをしていたアナウンサーさんは首が1番くすぐったいということで、VTRは終了した。

「ゆきりん、めっちゃ良いリアクションだったねぇ」

VTR中の私の反応を見ていたのか、司会が振ってくる。

「取材している方がすごいくすぐったそうにしてて、こっちまで何だか鳥肌立ってきちゃいましたよー!」

二の腕をさすりながらそう答える。

「では!取材していたアナウンサーさんと同じく、本日はゆきりんにもどこが弱いか検証を行いまーす!」

「え!?聞いてなんですけど!」

「そりゃぁ、今言いましたからねぇ」

確かに、いつもこの番組の台本はほぼないも同然なので、誰が何をするかは事前にわかることはない。

「ほんと私、くすぐりダメなんです!」

敏感すぎて、たまに後輩にまで身体を突かれて遊ばれているほどだ。

「では、ゲストのさっしー!くすぐる役をお願いします!そしてスタッフさんも準備の方をお願いしまーす!」

ここで収録が一旦切られる。

番組の前半はVTRで、CMを挟んでVTRの内容を体験したり深堀りするのが基本的な流れだ。

ディレクターさんにくすぐられるのはホントに無理だと話すも、マネージャーに許可は取ってるあるとのことで却下されてしまった。

マネージャーは「頑張れ」と一言残して去っていってしまった。

小休憩が終わり、スタジオ横にあった懸垂バーがスタジオに移動させられていた。

「も、もしかして・・・」

「そう、これにぶら下がってもらって、その間さっしーに羽根でこちょこちょしてもらうよ」

ディレクターさんがそう説明する。

「やったーーー。めちゃ楽しみ!」

さっしーは横で羽根を2本持って嬉しそうにしている。

「収録再開しまーす!」

「「はーい」」

ディレクターさんの指示に従い、出演者・スタッフがそれぞれの仕事に戻る。

柏木由紀のくすぐったいポイントはどこ?

「ではゆきりんはこれにぶら下がってくださーい」

収録が開始され、私は懸垂バーに強制的にぶら下がることに。

マネージャーの方を見ると目があったが、すぐ目を逸らされてしまった。

「こーゆうのって、ゲストがやるものじゃないんですか!?」

「私はくすぐる側だもーん」

さっしーは羽根をヒラヒラさせてスタンバイOKなようだ。

くすぐられることを渋々受け入れて懸垂バーをつかむと、スタッフさんが足元の踏み台をどかす。

ぶら下がってから気づいたが、今日の衣装はなかなか露出が多い。

ノースリーブのブラウス、膝が出る長さのスカートと、いつもとは違う雰囲気の衣装だったのはそういうことか!

「さっしー、やっちゃってください!」

「いぇーーい!こちょこちょーーー」

さっしーが満面の笑みで近づいてきて、丸出しの膝を羽根でこちょこちょしてくる。

「ひーーーーーーー!むりむりむりぃぃーー!クヒヒ、あは!もう終わりーーー!」

羽根のフワフワな部分というより、先端の少し硬いところを当ててきているため、爪でカリカリくすぐられているような感覚だ。

手でやられたら、これの5倍の本数でくすぐられることになっていたのか・・・

羽根で良かったと心底思う。

「まだ始まったばっかりですよーーー!さー、さっしーどんどんやっちゃってくださーい!」

「よーし、じゃあ次は丸出しのここだぁぁ!」

下半身から上半身に責めるポイントを変えてきた。

お腹らへんを羽根でこちょこちょしてくるが、服を着ているのでそこまでくすぐったくない。

「なんで水着にしてくなかったのーーーーー!」

さっしーがそうぼやく。

深夜番組とはいえ、地上波の番組で水着でくすぐりをする映像は流せないんだろう。

すると、くすぐりが止んだと思ったら、さっしーがモゾモゾと羽根をお腹あたり動かしている。

「ちょ、ちょっと!!それはダメでしょ!きゃっ!あっ!」

なんとブラウスのボタンの間から羽根を服の中に入れてきたのだ。

中に下着は着ているが、羽根の先端部分で引っ掻くように動かされると結構くすぐったい。

「ゆきりん、変な声が出さないでよーーー!」

「だ、だってー!」

「おっと、ここでディクレクターさんからそれはNGと指示が出ましたーー。違うところをくすぐってくださーい」

司会がディレクターさんの指示を代弁する。

ここの数秒はカットされるんだろうか・・・

「えー、じゃあ肌が出ているところはーっと」

服の中から羽根を取り出し、頬や首すじを羽根の硬い部分・ホワホワな部分を当ててくすぐってきた。

「あひひ、あっ、ああああ!あはは!なんか、恥ずかしいーーー!いーーー!ひひ!」

爆笑するほどくすぐったい訳ではないが、少しのくすぐったさと恥ずかしさでメンタルが先にやられそうだ。

「先ほど取材していたアナウンサーさんは首が弱点なようですが、ゆきりんはそこまでなようですねぇーー」

「さぁさぁ、ここは最後までとっておきましたよーーー」

さっしーはまだ触れていない、肌の露出した部分を羽根で指し示す。

「ちょっ、ちょっ、ほんと!ダメだから!」

「そんなこと言われたらやらない訳にもいかないでしょー。コチョコチョコチョーー」

「いやぁぁぁぁぁ!あははは!ダメダメダメェェェ!」

腋を直接くすぐられ、2秒も我慢できず手を離し降りてしまった。

「おっとぉぉ!ここでゆきりんギブアップー!ウィークポイントはやっぱり腋なんですねぇ」

「えーーーーー、もっとやりたかったーーーーー!」

私が降りてしまったことによりくすぐりタイムは終了し、さっしーが駄々をこねる。

「いやぁ、我々ももっと見ていたかったですが、巻きでと指示も出ておりますのでエンディングに進ませていただきます」

15分枠の番組のため、これだけでも撮れ高は十分。

そこからはいつも通りのエンディングが進められていくが、その間もずっとさっしーはもっとくすぐりたかったと興奮がおさまっていないようだった。

そして、私としてはかつてこの番組の収録で疲れたことはないほど疲労が溜まっていた。

出演者の方々に挨拶を済ませ、楽屋へと戻る。

すると、「えーーーーーい!」とさっしーの声が聞こえてきた。

振り向くと、さっしーは私に抱きついてお腹をワシャワシャくすぐってくる。

「きゃっ!あっ、ちょっと!アハハハハハ!なにするのっ!」

「だってぇ。さっきあんまりくすぐれなかったし?羽根でやるのつまらなかったしぃ」

「はぁ、びっくりした。これで満足した?」

「えぇ、むしろもっとやりたくなった」

「は?」

さっしーが真面目な顔でそういうので、思わず素な声が出てしまった。

「あ!そうだ!これからYouTubeでコラボしない?それで、『ゆきりんをくすぐってみた』っていう動画あげよう!」

「え?私だけくすぐられるの!?」

「じゃあ、ゆきりんの動画で私のことくすぐる動画出していいよ。めっちゃ伸びるんじゃない??」

「うーーーーん。まぁ確かに。最近ネタ切れてきたし・・・えーーーけどどうしよう。またくすぐられるのかぁぁぁ」

「はい、もう決定だから。帰る支度済んだら地下の駐車場のとこで集合ね。じゃ!」

そう言い残すとさっしーは早歩きで去っていってしまった。

「ちょ、ちょっとぉぉぉ!」

仕方ない。

YouTubeのストックももうないし、やってみるしかないかな。


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